税務お役立ち情報

税務調査のシーズン!?

年に1度の税務職員の一斉人事異動が終わり、これから11月にかけて税務調査の本格的なシーズンに入ります。

税務調査には、特殊な場合を除いて一定の流れがあります。

まず、税務署の調査官から事業所の顧問税理士に電話連絡があり、税務署から調査日程の照会があります。その後、顧問税理士、事業所間で日程調整して実際の調査日程を決めます。

 

税務調査ではどこを見られるの?

業種によって違いがありますが、やっぱり一番は売上です。請求書の控えや領収書などと通帳を突き合わせたりして売上の漏れがないかを調べます。次に仕入などの売上原価も同様に調べていきます。

 

ここで重点的にチェックされるのは期末の残高です。すなわち、売掛金、買掛金、棚卸金額が適正かチェックされます。

 

売上や原価は大丈夫そうだけど?

次は経費関係ですが、一般的には、交際費や福利厚生費、消耗品費など、会社経費と私的な支出が混在しやすい科目を重点的に調べていきます。

そして人件費を調べますが、調査官によっては順番が前後することもあります。

完全な人はいませんので、会社の経理や顧問税理士も、たまにはミスすることがあります。

でも過度に怖がることもありません。大抵の場合は大きな問題もなく終わる事がほとんどです。調査官もプロなので、単純なミスか、意図的な所得隠しかはわかります。

まあ、まれに頼りない調査官もいますが、それはそれで問題なく終わります。

 

よくある問題点は?

それでは、税務調査で、よくある問題事例をみていきましょう。

 

売上・・売上(売掛金)計上漏れ

3月決算なので3月(毎月20〆請求書)分まではきっちり売掛金と計上しています。
でも、3月21日から31日までの分が漏れていました。
この分は、4月分の請求書(納品書)から計算して売上(売掛金)として計上しなければなりません。

 

棚卸金額・・棚卸計上漏れ

特に期末間際で仕入れたものの中で売上未計上のものが、在庫に無ければ、必ず見つかります。
また、不良在庫についても指摘されやすいので、きちんと処分するなり商品価値が無いことの根拠資料をそろえておく必要があります

 

交際費・・私的費用の混入

ゴルフや高額な飲食代等などがチェックされます。誰と行ったか等が問題になります。
まあ、なかには事業用か私用かが明確に区分できないものもありますので、指摘されることが多い科目です。

 

福利厚生費・・実質給与ではないか?

従業員のためにと使った経費も、単純に会社の経費にならないで、給与としての経費扱いになることもあります。会社の経費になることには変わりありませんが。給与なので従業員に、所得税が追加で増えることになります。
福利厚生費のおおまかな基準は、従業員全員平等と社会通念上の金額です。特定の従業員だけへの支出や、世間の相場からしてあまりに高額な支出は問題になります。

 

消耗品・・資産計上すべきものは?

1個のものが10万円以上の物は、基本は一時の経費にはなりません。その物の耐用年数に応じて、減価償却費として数年間で経費化していきます。
やっぱりここでも高額な支出がチェックされます。

 

人件費・・親族への給与は妥当か? 架空人件費は?

親族に給与を支給している場合は、勤務実態が問題になります。業務日報など具体的な作業内容を整理しておくことが大事です。
架空人件費は必ずバレます。絶対にやめましょう。

 

税務署の指摘は絶対か?

売上計上漏れなどのあきらかな間違いは争う余地はありません。でも、経費関係の指摘は、十分、交渉の余地があります。顧問税理士さんと相談しながら、会社としての経費であることを主張していくことも大事です。

 

追徴課税とは?

さて、税務署の調査官も事業所さんも修正申告する内容に合意しました。
残念ながら、いくらかの金額を修正申告することになりました。
追徴課税はいくらになるの?

 

修正申告をした場合の税額です

○ 本来納付すべき税額(修正申告税額)と当初申告税額との差額

○ 過少申告加算税(10%、修正税額の50万円超分は15% 但し当初税額50万超の場合は、その税額超過分から15%)

○ 延滞税(年度によって変動します)だいたい3%未満です。

基本は上記の3点の合計額です。

 

実際どれくらい余計に払う


中小企業の会社で、当初の申告所得が300万円だった場合に、税務調査で単純な棚卸在庫計上漏れ200万円があり、修正申告した場合。

 

当初申告・・・平成29年12月末申告

修正申告提出日及び増加法人税納付日・・・平成30年8月31日

法人税増加税額 約30万円

過少申告加算税 3万円(30万円×10%)

延滞税 約5,200円

合計 約335,200円

 

本来の納付額より35,200円余計な税金が増加しました。

もし、修正内容が、仮装・隠ぺいによる悪質な場合は、上記の過少申告加算税に代えて重加算税が課されます。加算率は10%に代えて35%になりますので上記の例の場合の重加算税は105,000円になります。

 

その他に、無申告加算税がありますが、初めから申告していない場合は論外ですが、期限内に申告できなくて、申告書の提出が期限後になった場合も適用されます。

税務調整により不正が発覚して修正金額が大きくなると、加算税も多額になります。

当初の申告では十分注意して適正な申告をしましょう。

 

法人の役員に対する贈与・低額譲渡

 

消費税法には<法人が資産をその役員に対して贈与した場合におけるその贈与>については、<事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなす>という旨の規定があります(消費税法第4条第5項第2号参照)。

 

また、同じく消費税法に<法人が資産を役員に譲渡した場合において、その対価の額がその譲渡時におけるその資産の価額に比べて著しく低いときは、その資産の価額に相当する金額をその対価の額とみなす>という旨の規定があります(消費税法第28条第1項但書参照)。

以下において、それぞれのケースを見ていきます。

 

課税資産を役員に贈与した場合

 

例えば家電製品の小売業を営む甲株式会社において、その役員Aが店頭に陳列されてていたパソコンを勝手に自宅へ持ち帰って私用に使ったとします。

 

この場合、甲株式会社からAへ贈与があったとされます。そして、役員への贈与ですので、対価を得て行う資産の譲渡とみなされて、原則として贈与時におけるその資産の価額(時価に相当する金額)を課税売上高に計上しなければなりません。

このパソコンの陳列時の販売価額が20万円であったならば、この20万円を課税売上に計上することとなります。

ただし、棚卸資産を譲渡した場合には、「仕入金額以上の金額、かつ、通常他に販売する価額のおおむね50%に相当する以上の金額」をもって課税売上高に計上することが認められています。

そうすると、パソコンの仕入金額が8万円だった場合には10万円を課税売上高に、仕入金額が12万円だった場合には12万円を課税売上高に計上することが認められます。

 

著しく低い価額で課税資産を役員へ譲渡した場合

 

これは、その課税資産の時価のおおむね50%に相当する金額に満たない価額での譲渡があった場合をいいます。

 

例えば高級ブランド品を取り扱う乙株式会社において、その役員Bが本来の小売価額20万円であるヴ○○ンの財布を、3万円で乙株式会社から買い取ったとします。

この場合は、Bから受領した3万円ではなく、原則として20万円を課税売上高に計上しなければなりません。

なお、その譲渡された資産が棚卸資産である場合には、「仕入金額以上、かつ、通常他に販売する価額のおおむね50%以上に相当する金額以上の金額」での譲渡であるならば、著しく低い価額により譲渡した場合に該当しないものとして取り扱われます。

そうすると、財布の仕入金額が8万円だった場合には10万円以上、仕入金額が12万円だった場合には12万円以上で買い取れば、低額譲渡の規定に抵触しないこととなります。

 

また、金額だけみると法人が役員に対して課税資産を著しく低い価額で譲渡した場合に該当することになっても、その課税資産の譲渡が、役員及び使用人の全部について一律に又は勤務年数などに応じて合理的に定められた値引率に基づき行われた場合には時価ではなく、実際の対価の額を課税売上高に計上することとなります。

 

自家消費した場合の対価

 

自家消費をした場合に売上として計上すべき金額については、所得税と消費税で若干取り扱いがことなります。

 

(1)所得税

 

原則として自家消費した資産の通常販売価額で売上計上します(所基通39-1)ただし、特例がありまして、通常販売価額でなくとも、①通常販売価額の70%に相当する金額以上の金額、②仕入金額のいずれか大きい金額をもって売上計上することも認められています。(所基通39-2)

 

(2)消費税

 

棚卸資産を自家消費した場合は、原則として自家消費した資産の通常販売価額を課税売上高に計上します(消費税法28条第3項第1号、消基通10-1-1参照)

ただし、こちらも特例がありまして、通常販売価額でなくとも、①通常販売価額の50%に相当する金額以上の金額、②仕入金額のいずれか大きい金額をもって、課税売上に計上することも認められています(消基通10-1-18)。

なお、棚卸資産以外の資産を自家消費した場合には、その消費した時点での時価をもって課税売上高に計上しなければなりませんので、ご留意して下さい。

 

そして、消費税の計上基準によって売上計上した場合、所得税の計上基準に合致しない事が考えられます。

そのため、自家消費した場合には、「仕入金額より多く、かつ、通常販売価額の70%以上」の金額をもって売上高に計上しておくのが妥当と思われます。

 

自家消費した場合の計上例

 

簡単な例で確認したいと思います。

居酒屋X商店ではメニューの一つに鯖の塩焼きがあり、一匹300円です。この鯖の仕入額は一匹100円です。

X商店の店主αが余った鯖一匹を塩焼きにして昼食の一品にしました。

この自家消費において売上に計上すべき金額は・・・、210円です。

 

自家消費とは

 

所得税法には<居住者が棚卸資産を家事のために消費した場合等には、その消費した時等におけるその資産の価額に相当する金額は、その消費した日等の属する年分の事業所得等の金額の計算上、総収入金額に算入する>という旨の規定があります(所得税法第39条参照)。

 

また、消費税法には<個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費し、又は使用した場合におけるその消費又は使用>を<事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなす>という旨の規定があります(消費税法第4条第5項第1号参照)。

 

最も解り易い例が飲食店における食材の消費です。

食材が余ったりすれば、その食材を調理して自らの朝食・昼食・夕食の用に供することは往々にしてあるはずです。

この行為が<棚卸資産を家事のために消費>したことになりますので、これは売上(課税売上)として計上しなければならないこととなります。

そのため、飲食店に税務調査が入った場合、このような売上が計上されていないと必ず指摘を受けることになります。

よって、一定の基準等で算出した金額を収入に計上していきましょう。

 

ちなみに「収入に計上するのではなく、仕入から控除するべきなのでは?」という意見がありそうですが、自家消費した場合には収入として計上するように法や通達に記されている(所得税法第39条、所基通39-2、消基通10-1-18参照)反面、仕入から控除しても良いとする規定がありません。

また、収入に計上しないとなると、消費税の納税義務判定や簡易課税制度における税額計算に影響を及ぼします。そのため、自家消費は収入として計上することが妥当と思われます。この自家消費については、その収入に計上する金額の取り扱いが、所得税と消費税とで異なります。

また、法人については「法人がその役員に対して行う資産の贈与又は著しく低い価額による譲渡」の問題がございます。

次回ではその収入に計上する金額の取り扱いと問題点を説明させて頂きます。

 

相続税の税務調査(H27統計)

 

税務調査についての統計です。

平成27年の調査実施件数は1万2千件でした。

税務調査は、申告してから1年~2年後に行われるため平成25年、26年に申告されたものに対する調査かと思われます。

 

平成25年、26年の申告件数はおよそ5万5千件ですので、調査が行なわれる割合は約2割です。

また税務調査をする税務署の職員の人数は変動しないと仮定すると、平成27年の申告件数10万件に対して調査が行なわれる割合は1割程度に下がると思われます。

 

ただ調査が行なわれる割合は、1~2割ですが税務調査が行われた場合の申告漏れ等を指摘される割合は8割と非常に高いです。

 

平成27年に行われた税務調査の申告漏れ財産の内訳は次のとおりです。

現預金 1,036億円 不動産 410億円 有価証券 364億円

 

現預金が飛びぬけて多いですね。被相続人の名義ではないが相続財産に該当する名義預金や手持ち現金などが指摘されていると思われます。

税務署は事前に預金の動きなどを確認して、ある程度証拠を掴んでから調査を行うため申告漏れを指摘される割合は8割なのでしょう。

 

 

調査1件あたりの申告漏れ金額、追加で支払う税額は、どうでしょうか?

・調査1件あたりの申告漏れ財産価格  2,517万円
・追加で支払う税額            489万円

 

上記は全体の平均ですが、海外に財産を保有している等の海外関連の申告に絞ってみると調査1件あたりの申告漏れ財産価格は約4千万円と増加します。

 

海外財産の申告漏れ件数の構成割合は

現預金4 不動産2 有価証券2 その他2

 

ここでも現預金が大きなウエイトを占めていますね。

 

 

海外財産について相続税が課税されるかどうかの判定基準が、平成29年の改正でも厳しくなる改正が行われています。
また日本に比べて財産価値が下がりにくい欧米の中古物件に投資する相続対策にも改正のメスが入りそうです。

 

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