インターネットで年末調整
8月14日に新聞・テレビ等でも報道されましたが、政府は、年末調整の手続について、インターネット上で完結できるようにする方向で、調整を進めています。
年末調整とは?
年末調整とは、給与所得者が毎月の給与から引かれている所得税を年末に清算し、その年の所得税を確定させることです。毎月給与から引
かれている所得税は、あくまで概算のため、年末調整が必要となります。給与所得者は、基本的に一つの勤務先から給与以外に所得がないか、あっても少額である場合がほとんどです。そのため、年末調整で所得税の清算が完了し確定するため、確定申告する必要がないことから、非常に大切なのです。
年末調整の対象となる人とは?
次のいずれかに該当する人です。
(1)1年を通じて勤務している人
(2)年の中途で就職し、年末まで勤務している人
(3)年の中途で退職した人のうち、次の人
・死亡により退職した人
・著しい心身の障害のため退職した人で、その退職の時期からみて、本年中に再就職ができないと見込まれる人
・12月中に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人
(退職後本年中に他の勤務先等から給与の支払を受けると見込まれる場合を除きます。)
(4)年の中途で、海外の支店へ転勤したことなどの理由により、非居住者となった人(非居 住者とは、国内に住所も1年以上の居所も有しない人をいいます。)
年末調整の今までの流れと、これからの流れ
年末調整の流れを簡単に説明すると・・・・・
(1)金融機関・生命保険会社…
控除証明書・住宅借入金残高証明書等の証明書が自宅に郵送
(2)年末調整を受ける人…
郵送された証明書をもとに、「給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」と自身の扶養家族の状況を「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を記入し会社へ提出
(3)会社…
提出された書類を確認し、年末調整計算を進めていき市役所・税務署へ報告する。
マイナポータルを利用し、年末調整を行うようになると
(1)金融機関・生命保険会社…
控除証明書・住宅借入金残高証明書等の証明書が電子化され、自身のマイナポータルに届く
(2)年末調整を受ける人…
マイナポータルに届いた証明書をもとに、「給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」と自身の扶養家族の状況を「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を入力していく。
(3)会社…
提出されたデータを確認し、市役所・税務署へ報告する。基本的には、紙で行っていたものが電子化されるイメージですね。
今まで紙で郵送していたものが、電子化されるだけでも保険会社・金融機関の費用はかなり少なくなりますね。また、電子で送られてくるので書類が無くなってしまった!ということには、ならなくなります。
マイナポータルでの年末調整はいつから?
財務省と国税庁で協議に入っている段階であり、2018年度の税制改正大綱に盛り込まれる予定。2020年度を目標に導入を目指しているみたいです。
今年の秋からマイナポータルの利用が開始される予定なので、少し様子を見てからという感じです。
そして、「マイナポータル」を利用するにあたって必要なものが、いくつかあります。
(1)マイナンバーカード(申請して発行されるものです。通知カー
ドとは別物)
(2)ICカードリーダライタ
(3)パソコン
上記の3つが必要となります。
年末調整でマイナポータルを利用させたい理由
1つ目としては、「マイナンバーカード」の普及率向上があると思います。普及率は、現状10%を満たしていない状況です。確かに、私自身も持っていないですし、まわりにも申請したという人はいません。身分証明書は、運転免許証か保険証で足りてしまうのも普及率の低さに関係していると思います。
マイナポータルで年末調整が強制となれば、嫌でも発行しないと給与所得者の方は年末調整が受けられなくなってしまいます。しばらくは、紙との併用になるのでは?と私は、思っています。パソコン・スマートフォンの操作が苦手な人に強制的にやれというのも酷な話です。
2つ目の理由としては、会社の事務・書類保管の負担を少しでも減らすことだと思います。人数が多い会社になれば、年末にまとまった書類が来ることになり非常に負担になっていると思います。また、紙の場合は保存場所の問題もあります。今は、年末調整の書類にマイナンバーも記載されているので非常に取り扱いが難しいのです。
上記の理由から、年末調整でマイナポータルを利用させたいのだと思います。
まとめ
現段階では、利用時期等はまだ決まってはいませんが、マイナポータルを利用した年末調整が必要になってくると思います。詳しい情報が出てきたところで利用の方法も紹介できればと思います。
給与支払報告書について
毎年のことですが1月は
・法定調書合計表
・給与支払報告書
・償却資産申告書
と提出書類が色々あります。
今回はそのうち、給与支払報告書について少しだけ触れたいと思います。
給与支払報告書とは前年中に給与の支払いをした事業所がそれぞれ受給者の居住する市区町村に提出しなければならない書類です。
市区町村はその提出された書類をもとに住民税を計算します。
住民税の徴収方法には「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があり、いずれの方法にするか給与支払報告書の提出時に選択します。
「特別徴収」とは事業者が毎月の給料から天引して各市区町村へ納付する方法で、「普通徴収」とは各個人が自身で納付する方法です。
事業所からすると従業員が増えるにつれて事務手続きも増えてしまうので、「普通徴収」を選択したいところです。
実は地方税法では原則「特別徴収」が義務付けられています。
ただそれでも、これまでは事業所の都合で「普通徴収」を選択することができました。
しかし平成26年8月に「個人住民税特別徴収推進宣言」が採択されて以降、各都市で次々に特別徴収の徹底が宣言されています。
年末調整の対象とならない人ってどんな人?
年末調整は、原則としてその年最後に給与の支払をする際に行うことになっていますが、次に該当する人に支払う給与は、年末調整の対象となりません。
A 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない人その年最後に給与を支払う時までに「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない人については、年末調整を行いません。
例えば次のような人です。
1 2か所以上から給与の支払を受けている人で、他の給与の支払者に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人(いわゆる乙欄適用者)
2 労働した日又は時間によって算定され、しかも労働した日ごとに支払われる給与(日額表の丙欄を適用する給与)の支払を受けている人(日雇労働者など)
3 国内に、住所も1年以上の居所も有していない人(非居住者)
B その年中に支払を受ける給与の収入金額が2000万円を超える人
C 年の中途で退職(死亡退職などを除きます。)した人ただし、中途退職者については年末調整を行わなければならない場合もあります。
D 「災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律」の規定によりその年中の給与に対する源泉所得税及び復興特別所得税につき徴収猶予や還付を受けた人