税務お役立ち情報

繰延資産とは

貸借対照表の借方(左側)は資産の部といって、その会社の財産が列挙されてることはご存じのことと思います。
この資産の部は大まかに3つに分類され①流動資産、②固定資産、③繰延資産となっています。
流動資産は、現金化のしやすい資産。固定資産は長期的に使用目的の資産です。

なんとなくイメージできますよね。
では、繰延資産とは?

 

資産といいながら資産価値は全くなく本来は費用の支払なのですがその支出の効果が将来にわたって発現すると期待されるため資産として扱うこととしています。

 

言い換えれば、支出時に一度に損金計上が認められず一定の期間に配分して損金計上しなければならない費用を言います。

従って、会社での経理処理を間違えると経費の過大計上となり所得計算を誤ってしまう可能性もあるのでしっかり理解しておきましょう。そして、繰延資産には会計上の繰延資産と税法上の繰延資産の2種類があります。
それぞれ費用化する扱いが異なるので注意してください。

 

会計上の繰延資産

会計上認められている繰延資産は以下の5つです。

 

1. 創立費・・・・・会社を設立するまでにかかった費用
2. 開業費・・・・・会社の設立後、開業までにかかった費用
3. 株式交付費・・・新株を発行する際にかかった費用
4. 社債発行費・・・社債を発行する際にかかった費用
5. 開発費・・・・・新技術の採用、資源の開発等にかかった費用

 

上記の繰延資産は簿記会計を習った方でしたら馴染みが深いと思います。
そしてこの繰延資産を費用として償却する場合にはそれぞれ下記のように年数が定められています。

 

・創立費、開業費、開発費 5年
・株式交付費 3年
・社債発行費 社債の償還期限内

しかし、任意に償却することも認められております。
つまり、支払時に全額損金として処理することも可能です。

 

税法上の繰延資産

税法上の繰延資産は次のような費用を言います。

 

1.自己が便益を受ける公共的施設または共同的施設の設置・改良のために支出する費用
2.資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立退料その他の費用
3.役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
4.製品等の広告宣伝費の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
5.上記の他、自己が便益を受けるために支出する費用

 

あまりピンときませんね。

 

では、皆様も知っているような具体的な例を見てみましょう!

 

・お住まいの街の商店街にアーケードや街灯などが設置されているのを見たことがあると思います。この設置費用は各商店が管理組合を通じて設置費用を分担している場合が殆どです。
この支出は共同的施設の設置費用となり税法上の繰延資産となります。

 

・最近は郊外も下水道が整備されつつあります。この下水道の設置にあたって利用者に受益者負担金という支払いを求めてきます。
これなども公共的施設の設置費用として税法上の繰延資産に該当します。

 

・街近郊では土地の有効利用のため鉄道の高架下で店舗を構えている状態を目にすることがあります。当然、そこを借りる場合には鉄道会社に権利金を支払っています。
これは資産を賃借し又は使用するために支出する権利金として税法上の繰延資産となります。

当然、高架下のみならず店舗や事務所を賃借する場合に大家さんに支払う礼金や権利金なども同様です。

 

・よく見かけるコンビニや飲食店、本部とフランチャイズ契約を結ぶにあたって加盟料、保証金という名目の支払が発生します。このうち返還されない部分の金額は役務の提供を受けるために支出する権利金として税法上の繰延資産とされます。

 

・保険代理店で△△損害保険とかの宣伝用看板やネオンサインを見かけると思います。あれは代理店が支出して設置しているのではなく△△損害保険から広告宣伝用のために代理店に贈与されたものでありその贈与をした△△損害保険はその看板製作費を税法上の繰延資産として処理することになります。

 

・その他、同業者団体に加入金を支払った場合は自己が便益を受けるために支出する費用として税法上の繰延資産に該当します。

 

一見、支払手数料や諸会費などと支払時の損金にしてしまいそうな支出ですが繰延資産として計上し、一定の限度額計算の範囲内でしかその事業年度の損金に出来ませんので注意が必要です。

 

最後に繰延資産に該当するものでも20万円未満であれば支払時の損金として処理可能であることを覚えておいてください。

 


・2018年10月27日 公開


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