消費税引き上げ時の取扱の基本的な考え方
原則的に2019年9月30日以前の取引については旧消費税率の8%、2019年10月1日以降の取引については軽減税率が適用されるものと経過措置が適用されるものを除いて新消費税率の10%が適用されることとなります。
売上を認識する基準としては一般的に、販売側の会社が継続的に採用している認識基準により取り扱いが変わってきます。
例)通販などで商品を9月30日に出荷、10月1日に相手先に到着(納品)、同日に検収した場合
販売側の処理
1.出荷基準(出荷日に売上計上) ⇒ 8%
2.納品基準(納品日に売上計上) ⇒10%
3.検収基準(相手先が検収した日に売上計上)⇒10%
購入側の処理
販売側の認識基準による税率に合わせることとなります。
つまり、請求書などに記載されている税率を適用します。
経過措置の具体例
それでは、どのような経過措置が設けられているのか具体例をいくつかご紹介していきたいと思います。
旅客運賃等の税率等に関する経過措置
事業者が旅客運賃、映画・演劇を催す場所等への入場料金を2014年4月1日から施行日の前日(2019年9月30日)までの間に領収している場合には、実際の乗車や観劇等役務の提供が2019年10月1日以後に受ける場合であっても旧消費税率(8%)が適用されます。
「領収している場合」の考え方は下記の通りです。
定期券や年間パスポートのような一定期間継続的に利用できるものや回数券等を購入した場合にも、2014年4月1日から施行日の前日(2019年9月30日)までの間に購入していれば旧消費税率(8%)が適用されます。
・乗車券等が発行されない場合
チケットレスサービスにより乗車券等が発行されない乗車等であっても2014年4月1日から施行日の前日(2019年9月30日)までの間に購入していれば旧消費税率(8%)が適用されます。JRが提供するスマートEXなどが具体的なチケットレスサービスで、主にスマホ等を利用したものが対象となります。
・ICカードのチャージによる乗車等の場合
ICカードのチャージによる乗車等については、2014年4月1日から施行日の前日(2019年9月30日)までの間にチャージ(入金)し、2019年10月1日以後に乗車券等を購入する場合、チャージ(入金)した段階で乗車券等の販売が行われたこととはならないため、旧消費税率(8%)は適用されません。
・2019年10月1日以降のプラン変更による追加料金に係る適用税率
プラン変更等により2019年10月1日以後に料金に変更があった場合ダウングレードする場合については領収済みの料金の一部を返金する場合2019年9月30日までの間に領収していることから旧消費税率(8%)が適用されます。
アップグレードする場合については追加で発生した料金分は2019年9月30日までの間に領収されていませんので、旧消費税率(8%)は適用されません。
新幹線の普通席を予約購入していた場合にグリーン席へアップグレードするといった場合は追加料金分のみ新消費税率(10%)が適用されます。
なお、アップグレード等が新たな旅客運送契約の締結(2019年10月1日以降に一度キャンセルして改めて購入する等)となった場合は2019年9月30日までの間に領収している金額も含め全額に対して経過措置は適用されず、新消費税率(10%)が適用されます。
請負工事等に係る資産の譲渡等の時期の特例に関する経過措置
2019年10月1日以降に引渡しとなる請負工事については、通常であれば新消費税率(10%)が適用されるところですが、請負工事等に係る契約を2019年3月31日までの間に締結し、2019年10月1日以降に目的物の引渡しを行う場合の請負工事等に係る対価の額については、旧税率(8%)が適用されます。
他にも、予約販売に係る書籍の販売や資産の貸付(リースや家賃等)は、2019年3月31日までの間に締結した契約に基づき2019年10月1日以後に課税資産の引渡しや役務の提供を行う場合に経過措置の対象となり、旧消費税率(8%)が適用されます。
有料老人ホーム(介護サービス)の税率等に関する経過措置
事業者が、2013年10月1日から2019年3月31日までの間に締結した有料老人ホームに係る終身入居契約で、入居期間中の介護料金(消費税が非課税とされるものを除きます。)を入居一時金として受け取っており、かつ、当該一時金について当該事業者が事情の変更その他の理由によりその額の変更を求めることができる旨の定めがないものに基づき、2019年10月1日以前から2019年10月1日以後引き続き介護に係る役務の提供を行っている場合には、2019年10月1日以降に行われる当該入居一時金に対応する介護サービスについては旧税率(8%)が適用されます。
ただし、2019年10月1日以後に当該一時金の額の変更が行われた場合には、当該変更後に行う役務の提供については、この経過措置が適用されません。
経過措置を適用する際の注意点
通知義務
この経過措置の適用を受ける場合には、その相手方に対して経過措置の適用を受けたものであること及び適用を受けた部分に係る対価の額を書面で通知することとされています。
請求書や領収書等で内訳を記載しておく必要がありますのでご注意下さい。
課税仕入れを計上する側の処理について
経過措置の各規定により、旧税率(8%)が適用される31年施行日以後に事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れについては、必ず経過措置を適用することとなります。
例えば、旅客運賃等の税率等に関する経過措置の適用を受ける乗車券については、新消費税率(10%)により仕入税額控除を行うことはできません。
前回、平成26年4月から消費税率の引き上げが行われたときは、3月に定期券の購入窓口に長蛇の列が出来ていたことが思い出されます。
定期的に新幹線に乗られる方は回数券の購入、映画や観劇チケットの早期購入等ご検討されてはいかがでしょうか。
経過措置の取り扱いについては、「平成31年(2019年)10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A」に他にも細かく記載されています。
ご興味のある方は参考になさって下さい。
参考URL
基本的な考え方 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/pdf/02.pdf
具体的な事例編 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/pdf/03.pdf
・2019年1月9日 公開