税務お役立ち情報

法人の役員に対する贈与・低額譲渡

 

消費税法には<法人が資産をその役員に対して贈与した場合におけるその贈与>については、<事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなす>という旨の規定があります(消費税法第4条第5項第2号参照)。

 

また、同じく消費税法に<法人が資産を役員に譲渡した場合において、その対価の額がその譲渡時におけるその資産の価額に比べて著しく低いときは、その資産の価額に相当する金額をその対価の額とみなす>という旨の規定があります(消費税法第28条第1項但書参照)。

以下において、それぞれのケースを見ていきます。

 

課税資産を役員に贈与した場合

 

例えば家電製品の小売業を営む甲株式会社において、その役員Aが店頭に陳列されてていたパソコンを勝手に自宅へ持ち帰って私用に使ったとします。

 

この場合、甲株式会社からAへ贈与があったとされます。そして、役員への贈与ですので、対価を得て行う資産の譲渡とみなされて、原則として贈与時におけるその資産の価額(時価に相当する金額)を課税売上高に計上しなければなりません。

このパソコンの陳列時の販売価額が20万円であったならば、この20万円を課税売上に計上することとなります。

ただし、棚卸資産を譲渡した場合には、「仕入金額以上の金額、かつ、通常他に販売する価額のおおむね50%に相当する以上の金額」をもって課税売上高に計上することが認められています。

そうすると、パソコンの仕入金額が8万円だった場合には10万円を課税売上高に、仕入金額が12万円だった場合には12万円を課税売上高に計上することが認められます。

 

著しく低い価額で課税資産を役員へ譲渡した場合

 

これは、その課税資産の時価のおおむね50%に相当する金額に満たない価額での譲渡があった場合をいいます。

 

例えば高級ブランド品を取り扱う乙株式会社において、その役員Bが本来の小売価額20万円であるヴ○○ンの財布を、3万円で乙株式会社から買い取ったとします。

この場合は、Bから受領した3万円ではなく、原則として20万円を課税売上高に計上しなければなりません。

なお、その譲渡された資産が棚卸資産である場合には、「仕入金額以上、かつ、通常他に販売する価額のおおむね50%以上に相当する金額以上の金額」での譲渡であるならば、著しく低い価額により譲渡した場合に該当しないものとして取り扱われます。

そうすると、財布の仕入金額が8万円だった場合には10万円以上、仕入金額が12万円だった場合には12万円以上で買い取れば、低額譲渡の規定に抵触しないこととなります。

 

また、金額だけみると法人が役員に対して課税資産を著しく低い価額で譲渡した場合に該当することになっても、その課税資産の譲渡が、役員及び使用人の全部について一律に又は勤務年数などに応じて合理的に定められた値引率に基づき行われた場合には時価ではなく、実際の対価の額を課税売上高に計上することとなります。

 


・2017年7月3日 公開


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