所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案
所有者不明土地の増加に伴い、公共事業の推進等の様々な場面において円滑な事業実施に支障が生じていることを踏まえ、所有者不明土地の利用の円滑化を図るための「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案」が、閣議決定されました。(平成30年3月9日)
「所有者がわからない土地」とは、法務局にある不動産登記簿(所有者の台帳に相当)をみても、所有者が判明しない、または判明しても連絡がつかない土地をいいます。
所有者の死後、数十年以上、何代も相続登記がされていないなどの理由で、所有者が不明のまま放置されている土地は、「所有者不明土地問題研究会」によると、全国の所有者不明率は20.3%全国で約410万ヘクタールあり、九州の面積約367万ヘクタールを超えるそうです。
このような土地は、大都市圏以外の地方や農村で高い割合を占めています。
法律案の背景
我が国では、人口減少・高齢化の進展に伴う土地利用ニーズの低下や地方から都市等への人口移動を背景とした土地の所有意識の希薄化等により、所有者不明土地が全国的に増加しており、今後も、相続機会の増加に伴って増加の一途をたどることが見込まれています。所有者不明土地は、所有者の特定等に多大なコストを要するため、公共事業の推進等の場面でその用地確保の妨げとなり、事業全体の遅れの一因となっています。
法律案の概要
(1)所有者不明土地を円滑に利用する仕組み
反対する権利者がおらず、建築物(簡易な構造で小規模なものを除く。)がなく、現に利用されていない所有者不明土地について、以下の仕組みを構築。
・公共事業における収用手続の合理化・円滑化(所有権の取得)国、都道府県知事が事業認定した事業について、収用委員会に代わり都道府県知事が裁定
・地域福利増進事業の創設(利用権の設定)
地域住民等の福祉・利便の増進に資する事業について、都道府県知事が公益性を確認し、一定期間の公告に付した上で、利用権(上限10年間)を設定(所有者が現れ明渡しを求めた場合は、期間終了後に原状回復、異議がない場合は延長可能)
(2)所有者の探索を合理化する仕組み
・土地の所有者の探索のために必要な公的情報について、行政機関が利用できる制度を創設
・長期間、相続登記等がされていない土地について、登記官が、長期相続登記等未了土地である旨等を登記簿に記録すること等ができる制度を創設
(3)所有者不明土地を適切に管理する仕組み
・所有者不明土地の適切な管理のために特に必要がある場合に、地方公共団体の長等が家庭裁判所に対し財産管理人の選任等を請求可能にする制度を創設
所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案まとめ
この新しい制度では、「所有者不明土地」を活用して事業をしようとする自治体、民間企業、NPO法人などは、
1.都道府県知事あてに「事業計画書」を提出し、
2.審査のうえ、知事が事業に公共性があると判断すれば、「地域福利増進事業」に認定され
3・10年間の一時利用権(土地利用権)が与えられます。
4.所有者が現れた場合に備え、利用期間の賃料相当額を補償金として法務局に供託します。
5.所有者が現れて明け渡しを求めた場合は、原状回復して返還することが原則ですが、所有者が了解すれば利用を延長できます。
想定される施設は・・・
公共性のある、公園、運動場、公民館、図書館、コンサートホール、農産物直売所、仮設道路などを想定しています。
これからますます高齢化社会が進むことで、「所有者不明土地」が長い間未利用地だった状況を有効に活用するための取り組みとして、大いに期待したいです。
・2018年4月24日 公開