税務お役立ち情報

平成29年1月1日から医療費控除の特例としてセルフメディケーション税制が創設されています。確定申告へ向けて制度の内容についてご紹介させていただきます。

 

医療費控除とは? セルフメディケーション税制とは?

 

医療費控除とは、納税者本人や生計を一にする配偶者、その他の親族のために医療費を支払った場合、一定の金額の所得控除を受けることができるものです。
確定申告をすることで受けられる控除の中でも有名なので、医療費控除という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。

 

もう一方のセルフメディケーション税制とは、健康の保持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組(※1)を行っている方が、納税者本人や生計を一にする配偶者、その他の親族のために特定一般用医薬品等購入費(※2)を支払った場合、一定の金額の所得控除を受けることができるものです。

 

(※1)一定の取組とは、具体的には次の取組です。

1 保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査
(人間ドック、各種健(検)診等)

2 市区町村が健康増進事業として行う健康診査
(生活保護受給者等を対象とする健康診査)

3 予防接種(定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種)

4 勤務先で実施する定期健康診断(事業主検診)

5 特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導

6 市町村が健康増進事業として実施するがん検診

 

なお、申告される方が「一定の取組」を行っていることが要件とされているため、申告される方が取組を行っていない場合は、控除を受けることはできません。

 

(※2)特定一般用医薬品等購入費とは、医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)から、ドラッグストアで購入できるOTC医薬品(オーバー・ザ・カウンター・ドラッグの略)に転用された医薬品(スイッチOTC医薬品)の購入費をいいます。

 

それでは次に、医療費控除とセルフメディケーション税制の適用対象についてご紹介致します。

 

医療費控除とセルフメディケーション税制の適用対象

 

医療費控除もセルフメディケーション税制も医療に関する所得控除のため、適用対象について勘違いしやすい点があります。
では、具体的にその適用対象についてみてみましょう。

 

医療費控除の適用対象

医療費控除の対象となる医療費は次のとおりであり、その病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とされています。

 

1 医師又は歯科医師による診療又は治療の対価
健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として含まれません。

2 治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価
風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません。

3 病院、診療所、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設又は助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価

4 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。

5 保健師、看護師、准看護師又は特に依頼した人による療養上の世話の対価家政婦さんに病人の付添いを頼んだ場合の療養上の世話に対する対価も含まれますが、所定の料金以外の心付けなどは除かれます。
また、家族や親類縁者に付添いを頼んで付添料の名目でお金を支払っても、医療費控除の対象となる医療費になりません。

6 助産師による分べんの介助の対価

7 介護福祉士等による一定の喀痰吸引及び経管栄養の対価

8 介護保険制度の下で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額

 

セルフメディケーション税制の適用対象

セルフメディケーション税制の対象となる特定一般用医薬品等購入費とは、次の医薬品である一般用医薬品等(新医薬品に該当するもの及び人の身体に直接使用されることのないものを除きます。)のうち、医療保険各法等の規定により療養の給付として支給される薬剤との代替性が特に高いものとして厚生労働大臣が財務大臣と協議して定めるものの購入の対価をいいます。

 

1 その製造販売の承認の申請に際して既に承認を与えられている医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が明らかに異なる医薬品

2 その製造販売の承認の申請に際して上記1の医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が同一性を有すると認められる医薬品

 

上記のように規定されておりますが、具体的にどの医薬品が対象となるかイメージすることが難しいと思いますので、セルフメディケーション税制の対象とされるスイッチOTC薬の具体的な品目一覧は、厚生労働省ホームページに掲載の「対象品目一覧」をご覧ください。

 

なお、一部の対象医薬品については、その医薬品のパッケージにセルフメディケーション税制の対象である旨を示す識別マークが掲載されています。

 

医療費控除、セルフメディケーション税制の適用を受ける際の注意点

 

医療費控除とセルフメディケーション税制の概要、適用対象についてご紹介してきましたが、次は確定申告する際に注意しておきたいことについてみてみましょう。

 

従来の医療費控除では、年間の医療費合計金額が足切額の10万円(※3)を超えていないと所得控除を受けられないため、ドラッグストア等で購入した医薬品のレシートを保管せず、諦めていた方もいらっしゃったのではないでしょうか。

そのような方でも所得控除を受けることができるようになった制度が、医療費控除の特例として新設されたセルフメディケーション税制です。セルフメディケーション税制では、健康診断や予防接種等の健康の維持増進や予防への取組を行っている方が、ドラッグストアで特定一般用医薬品を購入して療養した場合、その年間の購入金額が1万2千円を超えるときは、その超えた金額(上限は8万8千円)を所得控除することができます。

(※3)10万円と総所得金額の5%相当額のいずれか低い方の金額。

 

ただし、セルフメディケーション税制の適用を受けることを選択した納税者は、従来の医療費控除を受けることはできず、従来の医療費控除を受けることを選択した納税者はセルフメディケーション税制の適用を受けることはできません。
つまり、セルフメディケーション税制と医療費控除は、どちらか一方しか受けることができないので、確定申告する際は注意が必要です。

 

セルフメディケーション税制の適用を受けることを選択して確定申告書を提出した場合において、後日、納税者が更正の請求や修正申告を行うこととなったときは、セルフメディケーション税制から従来の医療費控除へ適用を変更することはできません。
従来の医療費控除を受けることを選択した場合も同様です。

 

このように、従来の医療費控除を受けられなかった方でもセルフメディケーション税制によって所得控除をすることができる可能性がありますので、ドラッグストア等で購入したレシートは大切に保管されることをお勧めします。

 


・2017年11月28日 公開


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